企友会(バンクーバー日系ビジネス協会)によるインタビュー

カナダにおいてビジネスをされている方々へのインタビューを
掲載しています。

2018年03月22日

ビル 別所(Bill Bessho) 特別企画ロングインタビュー前編


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特別企画ロングインタビュー前編は、ビル別所さんを形作る礎、そして彼が全力で守り続けているものへと迫ってみます。


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ライブ演奏と人々の楽しげな話し声が響く、モダンで華やかなホテルのロビー。ガラス張りの落ち着いたラウンジの一角で別所さんをお迎えして一息入れた瞬間、蛙が飛び込む音が聞こえてくるような不思議な静寂を味わいながら、今回のインタビューは始まりました。、


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一所懸命。  

もともとは、武士が先祖から受け継いだ土地を次の世代へ引き継ぐために、命をかけて守ったことに由来。今目の前に与えられた1つのことに全力で打ち込むこと。




毎日一所懸命、ということが答えを生んでいく。

別所: 豪さんは企友会のボランティをしているんだね。僕も今でこそいろんな関係でボランティアをやってますが、なかなか若い頃からそこに目を向ける気持ちというか、余裕といいますか、どうしても目先の私利私欲に追われてしまったり忙しさで、時間があったら自分の時間に使う、みたいな。僕が豪さんの歳の時は全くそういうことをやってなかったですね。まぁ、あの頃は自分の会社を運営するのに精一杯だったということもあり。

豪 : 僕はボランティアでお声かけいただいて、ただそれを一所懸命やっているだけなんです。

別所: 僕が思うのは、今おっしゃった「一所懸命」という言葉に尽きるのではないかと思います。一所懸命やることが何なんだ、とかその場しのぎな考え方をして生きてしまうけど、毎日一所懸命、ということが答えを生んでいくと思うんです。

僕の好きな言葉に、


真剣だと知恵が出る、中途半端だと愚痴が出る。、いい加減だと言い訳ばかり。



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豪 : 別所さんは1981年に会社を起こされた時、カナダに来て、旅行会社の経験を積まれたとお伺いしたのですが?

別所: 私は最初日本でコンピューター業界にいて、ビザもその時取ることができました。バンクーバーへ来た後も、イギリス系のコンピューターの会社でシステムエンジニアの分野で働いていました。若いからできたんですけど、その会社のドアをノックして「私は日本で同じような会社で勤めていた。雇ってくれないか」と言って入社させてもらったんです。あの時よく英語が喋れない私を雇ってくれたな、と思いますよ。私は小学生の頃に母親に英語を教えてもらい、英語が得意な顔をしていたんですけど、うさぎと亀のようなもので、受験英語はできなかったし、まぁある程度は喋れたんでしょうけど、バンクーバーへ来たら全然ダメだった。2年ちょっとその会社で働いて、その頃の日本人は、Workholic、働きすぎな傾向があって、会社の中でも空回りし周りからも「働きすぎだろ」と言われていました。やりすぎのところもありましたね。そうすると周りの人が働いていないように見えてしまって。

そのうち、この仕事は自分には向かないのではないかな、と思い始めていました。そんな時たまたま旅行会社の広告が目に入って、そこに日本語学力が条件で書いてあったんです。それで行ってみると、そこはカナダで最初の頃の日本人観光客へのインバウンド事業のパイオニア的な会社だったんです。JTBなどの大手の会社がまだカナダに進出していない頃にこの会社は日本人客を一手に受け持っていたんです。旅行会社に勤めたことはなかったんですが、やってみようと思い、すぐに面接に行きました。もちろん当時は旅行の仕事が天職だとか全く思ってなかったですし、ここまで長く続くと想像していなかったです。その会社では、ガイドや手配の仕事、予約・仕入れなどいろいろなことをやらせてもらいました。ある程度勉強して、約2年ほどホテルとの交渉をしたり仕入れのマネージメントを任されていました。でも会社のオーナーとの考え方や経営理念が合わなかったんです。多角経営をしたかったんだと思うんですが、貿易の会社を作ったり、アウトバウンドをやったり、他の投資など色んなことをやってました。当時我々の旅行会社が、主な日本人観光客に対してサービスを行なっていて、非常に利益幅もあり利益率も取れてて、マネーメイキングの部門でした。いろんなことをやるのはいいことなんですけど、しっかりと根が降りる前にあれこれやってしまって、頑張っている旅行会社のお金が他に流れて、自分達には還元されない。私には耐えられませんでした。





周りの飾られているところを全部取って、
本当にこの人と信頼して仕事ができるのか。
本当に心中できるのか。

豪 : 別所さんは以前航空会社を作ろうとしていたと聞いたのですが。

別所: 航空会社を作ろうと言うか、関西へ飛行機を飛ばしたかったんです。今は成田・羽田からバンクーバーへ飛行機が飛んでいますけど、僕らの頃は、大阪・名古屋便もあって、そこへセールスを置いてやっていたんです。けど、AirCanadaの経営方針で名古屋便と大阪便をやめて、東京1本にしたんです。でも僕は東京だけがマーケットではないと思っていたのです。一社のみの運行であるとどうしてもその会社の都合に左右されてしまうので、それに対して僕は夏だけのシーズナルでもいいから関西の方にチャーター便を飛ばそうと思ったんです。それでこの業界のプロフェッショナルな経験者数人で一緒に組み、僕らでやろう、と声をあげたんです。

まず資金は数十億ぐらい必要で、各々ができる分野で動き始めました。それからモントリオールにあるチャーター会社のAirTransitと機材を共有して大阪へ週何便飛ばしましょうと言うところまで話が進み、飛行機に対して数億のお金を入れて、前金みたいなものですね。そうしないとAirTransitだって本気で動いてくれないので。日本のセールス事務所にも「よし!やるぞ」とセールスに力をいれてましたし、それを華々しくバンクーバーのみんなにも言ってしまって。それがですね、実際には必要資金は10分の1しか集まっていないと言うことがわかりました。どうも投資などの資金集めの方がうまくいかなかったんですね。投資家たちと話すのも、信頼が一番重要ですから、残念なことにその人は信頼をつくることができなかったのかもしれません。

やはり結局は、人ですからね。一緒にやる人に信用を置けないようでは今後うまくいかないです、たとえそれが社会的にどんな地位がある人でも。最終的に私は結構な額をすでに払ってしまいました。それでも「これでは僕は勝算が見えないし、もうこれ以上はできない、私は降ろさせてもらう」と言ったんです。その後もいろいろありましたが、それでも降りました。その時は考えましたね。本当にやろうかやらないでおこうか。やってたら、今の会社もすっ飛んでいたかもしれないですね。

豪 : すごい経験ですね。

別所: 人ですよね。やっぱり人を選ばないと自分をオープンにして、気持ち・信頼・考え方も全てそうなんですけど、その辺が合わなかったらもう早くやめたほうがいいですね。そこの大事な部分を共有していないと、やることもうまくいかないと思います。

豪 : 別所さんは今のご経験のように、人の合う合わないというのはどういうところで判断されるんですか?

別所: 話しをしてたり、受け答えとか一つ一つの言動でわかりますね。あ、この人は信用できるな、信用できないな。この人はいろいろ被っていて表を出してないな、とか。僕はガイドしてたんで、何千何百の人と会っていろんな人をみてきたので瞬時にだいたいわかりますね。投資の場合もその人のアイディアは良かったし、カナダ観光局からの紹介だったんです。つまり国交相、国からの紹介みたいなものですからね、すごく安心してたんですよ。普通信じますよね、でもそれが間違ってましたね。最終的には自分の目で判断したほうがいいですね。周りの飾られているところを全部取ってみて、本当にこの人と信頼して仕事ができるのか。本当に心中できるのか、ぐらいの気持ちがないとだめでしょうね。実際、話をしていると違和感とかあるんですよ。あるいは言ったことの約束を果たせない、簡単なことなんですよね、人間って。簡単なことなんですけど、礼儀とか、学びとか、謙虚さとか、そういうものができない。仕事ができる・できないというのはあんまり見ていない。やっぱり人なんです、人格なんですよね。他のことって案外ついてくるじゃないですか。





大切にしていること「心から喋り、心から聴く」。

豪 : 譲れないもの。人との関係の中で、最も大事なひとつをあげるとしたらなんですか?

別所: 僕は自分が行なったり・言ったりすることに、心から喋り・心で聴くというのを大事にしているんです。僕自身は一つ一つを真剣にしているつもりんなんですけど、お互いそうできる人が僕にとって一番コンフォタブルです。どうしても人間って目先にうまく乗ってやろうとか使ってやろうとか、いろんな人がいますから。


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豪 : 航空会社の設立は、日本からのお客様を根本的に増やすことを目的にされたのですか?

別所: 増やすのもそうですけど、AirCanadaへなんというか、潜在需要と市場に気が付いてもらいたいと。彼らがある程度独占している中で、マーケットを少し無視したように効率、利益重視、あるいはコスパでやってしまう。実際マーケットは欲していたのに、飛んでいた飛行機を他に回すために取っちゃったわけですからね、会社の都合だけでね。それは良くない。エージェントだって一所懸命売ろうと思って登っていたハシゴを外された感じですからね。それは僕にはちょっと許せなかったですね。あまりにも大企業的な考え方で、もうちょっとお客さんのマーケット目線の形でやってほしかったので、何か彼らにやりたかったんですね。マーケットはこれだけあるんだぞ、と。そうか民間でもこれだけやるのか、とね。

豪 : ちなみにそれは何年前のことですか?

別所:2007年になりますかね。





中小が元気になれば、全体が底上げできる。

DSC06149.JPG豪 : 今後は何かされようと考えていらっしゃるんですか?

別所: モントリオール便が201862日から就航します。カナダと旅行業界にとって一つの良い転機かなと思っています。モントリオールというのは、またちょっと違うカルチャーを持ってますよね。いままでと違うゲートシティが増える。それが、日本市場を活性化させる一つの起爆剤になってくれればいいなと思っている。だからモントリオール便が飛ぶと聞いた時から、モントリオールに事務所を作ろうと思って今動いています。事務所を開くことによってそれが鶏と卵になるかもしれないけど、話題性も作れるし、ケベック・モントリオールのホテルやいろんなサプライヤーから見ても、こいつ真剣なんだなって、僕らの覚悟やコミットメントも見せられる。

ご存知の通り、僕らも中小なんですね。JTBとか日本の大手のエージェントさんもカナダに出ている。だけどどこの業界もそうですが、中小が約90%なんですよ。中小企業でもっているわけなんです。日本にも1万社ぐらいの旅行会社があるんですけど、そのうち中小はだいたい90%ぐらい。だから中小に元気になってもらう。サプライヤーから中小に売ってもらえるような環境やインフラ作りをまずしないと、全体の底上げはできないと僕は思っているんです。中小は大手と違って資金力とか人間とか大変です。5人とか20人でやっているところですからね。それでも売るからには、カスタムなサービスとか、12人でもお客さんの受け皿となるインフラを作れるように。だから僕らも先行投資していく。売ってくださいと頼んでおきながら「うちは事務所はないので、委託してやりますから。」じゃあ向こうも納得しないんじゃないかなと。

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豪 : 言葉の重みがないってことですね。

別所: やってくれっていう割には、お前覚悟がないなって思われる。だからうちもこれだけやります、汗かきます、リスク背負いますから売ってくださいと、そういうアプローチです。それもありますし、いろんな効果を自分なりには期待していますけどね。

豪 : 僕も過去に色々旅行に行きましたが、その時はネットで直接予約したりしてました。今はAirbnbというのも出てきて、旅行業界って大きく変わってきているように感じます。実際、僕が使うのは、ネットで予約したり、比較サイトなどで情報を得たりします。旅行業界の将来像はどのようにお考えになっていますか。

別所: 第4次革命、全く我々の業界も他の業界のようにAI(人工知能)やIot(インターネット・オブ・シングス)とか競争相手はIT関係になってきています。Microsoft, Expedia, Googleもはじめるでしょうから。昔のトラディショナルなエージェント経由ではなくて、ホテルやエアラインも直接・個人ブッキングするオンラインエージェントとか。僕の百社くらいあるエージェントの中でも10社ぐらいありますね。インターネットで全てを予約するダイナミックパッケージというんですが、毎週何十とブッキングが入って来ます。それでもエアーとホテルだけのパーツが揃えばお客様は満足かというと、そうでもないですよね。ホテルはAirbnb、移動もUberで行けるかもしれないけど、それ以外に僕らが提供できるものはまだあると思うんですね。たとえば「エアーもホテルも買いました。でも、朝の早朝ツアーに行きたいので、オプションはそちらで買います。」など、我々だからできるクリエイティブなツアー。今は歩くツアーとか食べ物のツアーとかが増えてきてて、お客さん自身も一般的な観光よりもちょっと現地の人たちが楽しんでいるものを垣間見たいというのがあるから、出す方法はいくらでもあると思うんだよね。そういうところに生きる道を探さないと。





今の形のままでの延長では未来はない。
チーム力とか組織力に変えていかないと。

別所: 僕は、36年間旅行業会の成長時代を来ているのでラッキーでした。でも今は2030代の世代の彼らにもっと知恵を出してもらいたいと思ってます。今の新しいやり方・考え方に変えなければ、難しいだろうね。私が今までやって来たやり方の成功例というのは意味のなさないものですから、今の形のままでの延長では未来はないと。それは口すっぱく言っています。会社や社員のあり方も、昔はカリスマ的なものとか、1人のリーダーシップでぐっと引っ張っていくというやり方で来れましたけど、そうはいかないと思うんですね。やっぱり、みんなの個性でみんなが一所懸命、11人が汗かいて知恵を絞りながら一緒にやっていくという形、チーム力とか組織力に変えていかないと難しいんじゃないですかね。

豪 : この業界を牽引しながらリーダーとして、次の世代、新しい社員への思いや、心がけていることはありますか?

別所: 答えを持っているわけではないけど、わからない中で一所懸命毎日模索している。僕なんか、始めたときから毎日絶えず危機感とか感じていて、36年間犬かきをずっとやっているようなもので、この犬かきを止めたらもう沈んで溺れてしまう。絶えず息をするためにずっと頑張ってきたような気がするんです。今問題なのは、業界に魅力がない。旅行業界に入ってこようとする新しい世代の方がなかなか少ない。1つに季節的な稼働という問題があります。5月から10月は繁忙期で良いシーズンなんですけど、残りの11月から4月はほとんど動きがない。くまさんみたいなもんですよね。夏の競争がすごくて余裕がなくなると、冬をどうやって過ごせばい良いのか。たとえ良いガイドが入ってきても、安定したハウスキーパーの仕事に持って行かれてしまうわけです。我々が抱えているこの問題は結構シリアスで、ガイドに成る人がいない。今いるガイドさんもエイジングでいなくなっちゃう。ガイド不足と高齢化。

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「お客様に感激や感動を与えたい」の使命を受け継ぐ
いろんなバックグラウンドや個性の若い人たちが、
次の時代の業界をつくる。

別所: 僕は無理してでも先行投資して人を雇っているんです。いろんなバックグラウンドや個性の人を入れることによっていろんな考え方をどんどん聞いていく。なんか、糸口をと。僕らにはないオープンマインドな新しい考え方を聞きたいんです。業界が長い人は仕事はできていいんですけど、頭が硬い。私含めて非常に固定概念が強すぎて、いいものを見ても「あぁ売れません」って勝手に言っちゃう。頭が凝り固まっているわけですよ。なんでそんなことわかるんだ、やってもいないのにわかるわけないだろ、と思うんだけれどもそう言ってしまう。だから、もっともっと頭のやわらかくて、いろんな業界からの人が来るのがいい。だっていろんなお客様が来るわけですからね。僕らだけのマインドでやっていてはダメだと思う。旅行のもつ魅力から有能な若い人たちに入ってきてほしい。

豪 : 別所さんのように、リーダーの方が仕組みであるとかよりも、とんでもないアイディアかもしれないものを受け入れようとする、その柔軟さを頭から心からもっていらっしゃること。それはものすごい勇気だと思いますし、新しいことだなと思います。

別所: いえいえ。そういっても年取ると感受性は弱くなって来ます。最初にロッキーを見たときにあんなに思っていた感情が何回も見てしまうとだんだん薄れてきてしまう。でも、初めて来たお客さんはその感動があるわけですよね。そのWowという感動を持たなきゃいけない。「お客様に感激や感動を与えたい」それがぼくらのひとつの使命なので。それを与えるには、同じ業界だけでずっと来た人にはなかなか見えないものがある、と思うんです。そこを耳をダンボにし、若い人からどんどん吸収できるようにあたまも揉みほぐして、そうして行かないと今の時代は動けないというか、生きていけないんではないかなと思いますね。


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「一生学び」

世代や立場などの既成概念の垣根を超えた学びから
できること。

豪 : 若い人たちがこんな風に必要とされているのはすごく勇気をもらえます。でも現実には、ゆとり世代だとか言われたり、自分が責任を背負わなくても生きて来れていたり、なので発言が軽はずみなところがあったり、覚悟が小さかったりする人もいると思います。そんな中、別所さんはなぜ、若い方に耳を傾けようと思っているのですか。

別所: もちろん若い人と比べると、人生経験とか仕事経験とかで当然僕らは優位に立っている部分はありますけど、やっぱり僕は一生学びだと思っているんですね。謙虚さというものは忘れないし、老若男女だからっていう差別は絶対にしたことないし、何か学べるんだと。豪さんと話している中でも違う考え方など何かある、それをオープンに言える。必ずそこにはなんか光があると思うんです。その人に対しての遵守、リスペクトを絶えず持って聞く。人生っていうのは何が起きても必ずそこには理由があるわけですから。一期一会のある中で、突拍子のないことを言う人もいるでしょうね。でもクレイジーな意見に対して怒るんじゃなくて、言った背景とか理由とか、なんでそんなこと言うんだろう、なんでそういう風に思ったの?とか、学ぶところはいっぱいあると思います。One Wayで潰すのではなく、言ってくれるひとつの勇気とか、そういうことの方が僕はちょっとカウントしたいんですね。それに僕らの持っている経験とかの引き出しから違うものを融合させて、なんかできる可能性もあるじゃないですか。まったく無駄なものっていうものはないと思う。すべてのものに理由・意味があると思う。僕はそういう気持ちで聞くので、全てが僕にとって新鮮ですね。




後編をお楽しみに。








posted by k-interview at 16:36| インタビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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